その日
約束の時間に30分程遅れてしまった。
その日は全国共通のイベントがある日で
道は大渋滞だったからだ。
謝りながらわたしは彼を見上げた。
長めの髪をカットして来たせいか
相変わらず顔は小さく幼かったが、
改めて見ると思ったより背がスラリとしていて手足が長く
立派な青年の雰囲気だった。
彼は嬉しそうに真っすぐわたしを見つめ言った。
「今日は来てくれてありがとうございます。」
彼の礼儀正しさや
真っすぐ見つめるその純粋なまなざしに動揺しながらも
わたし達は食事の出来るお店を探しながら歩き出した。
けれど街はイベントで
食事処はカップルや家族連れでごった返していて
どの店も行列を作っていた。
彼は未成年だ。
居酒屋に行くのも気が引けた。
いろんな話をしながら歩き続けたが適当な店が見つからず、
わたしは空腹と疲れで歩けなくなってしまった。
彼もきっと同じだろう。
そんな時目の前にそのような綺麗なホテルがあり、
なんと1部屋(空室)となっていた。
料金を見ると高い。
でももうこれ以上歩けないし食事もせずに帰ることは出来なかった。
なぜなら、彼との会話の中で19年間彼女が居なく
今日が人生初のデートなのだと聞かされたからだ。
さすがに「もう帰ろう」とは言えなかった。
わたし達は意を決して門をくぐった。
続く・・・
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