わたしは前夫によるモラルハラスメントで
すっかり精神を病んでしまい別居していた
まだ正式に離婚はしていなかったが夫婦間は完全に破綻していた
わたしは当時の自宅から少し離れたところに部屋を借り
人目を遠ざけ自分という存在を消すかのようにひっそりと暮らしていた
仕事をしていたが休みの日は一歩も外出せずロフトにこもっていた
息をしようものなら前夫が殺しに来るんじゃないかという
訳の分からない恐怖感を抱くほどに精神を病み
物音もたてず息を殺すような生活を送っていた
何かをしていないとどうしても嫌な事を考えてしまう休みの日がつらく
週末の金曜・土曜だけわたしは夜のネオン街で年齢をごまかし
いわゆるキャバ嬢のバイトを始めた
当時の年齢からちょうど一回り年を偽って29と言っていた
バイトを始めて1ヶ月ほどたったある日マネージャーに
『この日女の子の出勤が少ないので出勤出来ないか?』と聞かれたが
普段昼間の仕事をしていたわたしは週末だけの条件だったので最初は断った
第一仕事が終わってからでは開店時間に間に合わないからだ
でも遅刻でもいいし早退してもいいから出勤して欲しいと再度頼まれ、それを受けた
フリー(女の子の指名の無い)のお客さんには
女の子を順番に1人づつ2~3回つけるのがこの店の回し方だった
必ずお客さん1人につき女の子を1人以上つけ、
適当な頃合でまた違う子を着けるシステムで
長時間いれば6人以上の女の子が代わる代わる入れ替わる
だから女の子の出勤が少ないとはいえその日20人は居た
そして若旦那君との初めての対面は“その日”だった
若い3人組だったので多分わたしは着かないと予測していたが
最後に呼ばれ若旦那君に着くよう言われた
平日居ないはずのわたしが頼まれて出勤し
遅刻と早退の間の決して長くは無い勤務時間の中で彼らは店に来た
偶然に偶然が重なりわたしは若旦那君と出逢っていたのだ
わたしは3人グループで来た内のひとり若旦那君に着くよう言われ接客した
彼らは初めてこの店に来た事
こういう飲み屋はほとんど経験が無い事
まだ十台だという事
友達に誘われなければ来ていなかったなどの会話をした
彼は非常にシャイでわたしの顔を見れないでいたが
帰り際お見送りで一緒にドアへ向かい歩き出そうとした時
急にわたしの顔をまっすぐに見てこう言った
『また来ます』と。
不思議な事はそのあともずっと続いた・・・。
0コメント